建築業界にはさまざまな職人がいますが、「建具職人」と「内装工事」はどちらも建物の仕上げに関わる大切な仕事です。ただ、実際にどのような違いがあるのか、はっきりとは分からない方も多いのではないでしょうか。
建具職人は、扉や障子、ふすま、収納の扉など、建物に欠かせない建具を作り、取り付ける専門職です。一方、内装工事は壁紙や床、天井などの仕上げを担当し、建物の快適さや美観を整える役割を担っています。
どちらの仕事も、建物の印象や使い心地に直結する重要なもの。それぞれの役割や魅力を知ることで、より建築の世界を身近に感じてもらえればと思います。
建具職人の仕事内容とは?:扉・障子・家具などを手掛ける職人
建具職人の仕事は、建物に欠かせない扉や障子、ふすま、収納扉などを作り、取り付けることです。建具は単なる仕切りではなく、空間の雰囲気を左右し、使い勝手にも大きく影響するため、建具職人の役割はとても重要です。
建具職人は、主に木材を扱うことが多く、手作業で細かく加工しながら、美しく丈夫な建具を仕上げていきます。オーダーメイドの建具では、家の雰囲気や住む人の好みに合わせたデザインを考え、一つひとつ丁寧に作り上げます。最近では、木だけでなくアルミやガラスを組み合わせた建具も増えており、時代の変化に合わせた技術も求められています。
また、取り付け作業も重要な仕事のひとつです。既製品の建具でも、現場の状況に合わせて微調整をしながら取り付ける必要があり、ミリ単位の精度が求められます。建具がきちんと収まることで、開閉がスムーズになり、長く快適に使うことができます。
さらに、古くなった建具の修理や調整を行うことも建具職人の仕事です。特に日本の伝統的な障子やふすまは、木枠が歪んだり紙が破れたりすることがあるため、定期的なメンテナンスが必要になります。こうした修理の技術も、建具職人にとって大切なスキルです。
建具職人の仕事は、細やかな技術と経験が求められる一方で、自分の手がけた建具が長く使われる喜びも味わえます。住まいの快適さを支える、やりがいのある仕事です。
内装工事の仕事内容とは?:壁紙・床・天井などを仕上げる仕事
内装工事の仕事は、建物の内部を美しく仕上げ、快適な空間を作ることです。壁紙や床、天井などの仕上げを担当し、見た目の美しさだけでなく、住む人が心地よく過ごせる空間を作る大切な役割を担っています。
例えば、壁紙(クロス)の施工では、ただ貼るだけでなく、下地の状態を確認し、表面をなめらかに整える作業も重要になります。壁紙の柄や素材によって施工方法が変わるため、細かな技術と経験が必要です。また、住宅だけでなく、オフィスや店舗などでも用途に合った壁材を選び、施工することが求められます。
床の工事も内装工事の一部です。フローリングやカーペット、クッションフロア、タイルなど、使用する素材によって施工方法が異なります。床材の選び方は、見た目だけでなく、耐久性や手入れのしやすさなども考慮する必要があり、経験を積んだ職人の知識が活かされます。特にフローリングの施工では、床が平らになるように細かく調整しながら貼り付けるため、正確な作業が求められます。
また、天井の仕上げも重要な仕事です。クロス貼りのほか、塗装や化粧ボードの取り付けなど、建物の用途やデザインに応じた仕上げが行われます。天井の施工は高所作業になることが多く、安全に配慮しながら慎重に進める必要があります。
内装工事の仕事は、単に見た目を整えるだけでなく、空間の雰囲気や快適さを左右する重要な役割を担っています。職人の手によって仕上げられた内装は、住む人や使う人の生活をより豊かにし、長く快適に使える空間を生み出します。
使用する材料と道具の違い:木材・建材・仕上げ材、それぞれの特徴
建具職人と内装工事の仕事では、それぞれ異なる材料や道具を使用します。どちらも建物の仕上げに関わる仕事ですが、使う素材や工具の特徴を知ることで、より仕事の違いがはっきりと分かります。
建具職人が使用する材料と道具
建具職人は主に木材を扱います。扉や障子、ふすま、収納の扉などを作るために、ヒノキやスギ、タモなどの木材を使うことが多いです。最近では、強度を上げるために合板やアルミ、ガラスを組み合わせた建具も増えています。
使用する道具は、木材の加工に欠かせないノミ・カンナ・ノコギリが基本です。ノミは細かい彫り込みをするための道具で、カンナは表面を滑らかに整えるために使われます。ノコギリも、建具の形を正確に整えるための重要な道具です。最近では電動工具も活用されるようになりましたが、最終的な仕上げは手作業で行うことが多く、繊細な技術が求められます。
内装工事で使用する材料と道具
内装工事では、壁紙(クロス)、フローリング、カーペット、タイル、石膏ボードなど、多様な建材を扱います。壁紙には紙製、ビニール製、織物製などがあり、用途やデザインに応じて使い分けます。床材も、木質フローリングやクッションフロア、タイルカーペットなど、使用する場所や目的によって選びます。
内装工事の職人が使う道具は、壁紙を貼るためのローラーやカッター、のり刷毛、床材の施工に使う接着剤やヘラなどがあります。仕上げの美しさが求められるため、正確にカットしたり、表面を滑らかに整えたりするための道具が多いのが特徴です。
働く現場の違い:新築・リフォーム・オフィスなどの施工環境
建具職人と内装工事の職人は、どちらも建物の仕上げに関わる仕事ですが、実際に作業をする現場には違いがあります。新築の現場、リフォームの現場、オフィスや商業施設など、それぞれの環境によって求められる技術や対応も変わってきます。
建具職人の働く現場
建具職人は、住宅やオフィス、商業施設の建具を取り付けたり、調整したりする仕事を行います。新築の現場では、あらかじめ工場で加工された建具を現場に運び、壁や枠に合わせて取り付ける作業が中心になります。寸法通りに製作された建具でも、微調整が必要になることが多く、現場での細かい作業が求められます。
リフォームの現場では、既存の建具を修理したり、新しい建具に交換したりする仕事が増えます。古くなった扉やふすまを新しいものに交換するだけでなく、寸法が合わなくなった枠に調整を加えたり、開閉がスムーズになるように調整したりすることも大切な仕事です。
オフィスや商業施設では、デザイン性や機能性を重視した建具の取り付けが求められます。特に、防音や防火機能を備えた建具の施工も多く、精密な技術が必要になります。
内装工事の働く現場
内装工事の職人は、壁紙や床、天井の仕上げを担当するため、新築やリフォームのどちらの現場にも関わります。新築の現場では、建物の骨組みが完成した後に、クロスやフローリングなどの内装仕上げを行います。広範囲にわたる施工が多いため、スピーディーかつ丁寧な作業が求められます。
リフォームの現場では、古い壁紙の張り替えや、傷んだ床材の補修・交換が主な仕事になります。特に、居住中の家や営業中の店舗での作業では、家具や設備を傷つけないように慎重に作業を進める必要があります。
オフィスや商業施設の内装工事では、デザインや機能性を考慮した施工が求められます。例えば、オフィスでは吸音効果のある壁紙やカーペットが使われることが多く、商業施設では人の流れを考慮した床材の選定が重要になります。
必要な資格や技術の違い:専門性と求められるスキルを比較
建具職人と内装工事の職人は、それぞれ異なる専門技術が求められます。扱う素材や施工方法が違うため、必要な資格や習得すべきスキルにも大きな違いがあります。ここでは、それぞれの職種に必要な技術と資格について比較していきます。
建具職人に必要な技術と資格
建具職人は、木材をはじめとする素材を加工し、扉や障子、収納などの建具を製作・設置する専門職です。細かい調整が求められるため、精密な作業技術が必要になります。例えば、寸法を正確に測り、ミリ単位の加工を行うスキルが求められます。また、扉や引き戸は日々の開閉で摩耗するため、長く使えるように調整しながら設置する技術も重要です。
建具職人が取得しておくと有利な資格としては、以下のものがあります。
建具技能士(1級・2級):木製建具の製作や取り付けの技術を証明する国家資格。
木造建築技能士:木造建築の知識と技術を持つことを証明する資格。
建築大工技能士:大工としての技術や知識を証明する資格で、建具職人にも役立つ。
これらの資格がなくても建具職人として働くことは可能ですが、技術力を証明するための指標となり、キャリアアップにもつながります。
内装工事の職人に必要な技術と資格
内装工事の仕事では、壁紙(クロス)の貼り付けや床材の施工、天井の仕上げなど、広範囲の仕上げ技術が必要になります。特に、壁紙の施工では、下地を整える技術が重要です。下地に凹凸があると、仕上がりに影響が出るため、丁寧な作業が求められます。
また、床の施工では、フローリングやカーペット、クッションフロアなど、素材ごとに異なる施工方法を理解し、適切な工具を使い分けるスキルが必要です。
内装工事の職人が取得すると役立つ資格には、以下のものがあります。
内装仕上げ施工技能士(1級・2級):壁紙貼りや床仕上げなど、内装仕上げの技術を証明する国家資格。
クロス施工技能士:壁紙の貼り付け技術に特化した資格で、施工の専門性を高める。
床仕上げ施工技能士:フローリングやカーペットなどの施工技術を証明する資格。
内装工事の職人にとっては、技術の正確さと施工のスピードが重要なスキルとなります。施工する範囲が広いため、効率よく作業を進める能力も求められます。
まとめ
建具職人と内装工事の職人は、どちらも建物の仕上げを担う重要な仕事ですが、扱う素材や技術、施工の目的には大きな違いがあります。
建具職人は、扉や障子、収納などを製作・取り付けし、木材の加工や調整技術が求められる職人です。一方、内装工事の職人は、壁紙や床、天井の仕上げを担当し、建物の美観や快適性を高める施工を行う仕事です。
それぞれの専門技術と職人の手仕事によって、建物はより快適で魅力的な空間になります。建築の仕事に興味がある方は、自分に合った道を選び、職人の技を極める楽しさを感じてみてはいかがでしょうか。